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イプセン・作/宮田慶子・演出 『ヘッダ・ガーブレル』 を観る

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作: ヘンリック・イプセン
演出: 宮田慶子
出演: 大地真央、益岡徹、七瀬なつみ、山口馬木也、青山眉子、羽場裕一、田島令子

新国立劇場小劇場にて、イプセン作の『ヘッダ・ガーブレル』を観た。 新国立劇場演劇芸術監督の宮田慶子による演出である。
キャストも大地真央はじめ豪華だ。
イプセンと言えば、私は『人形の家』程度しか知らなかった。
今回観た『ヘッダ・ガーブレル』は1890年に発表された”不朽の名作”らしい。 さすが名作だけあって、ストーリーそのものもなかなか面白い。
でも何といっても素晴らしかったのは、大地真央の演技。 傲慢で小悪魔的なヘッダ役を、エレガントに、かつ、チャーミングに演じていた。
大地真央って、改めてすごい。 舞台から3~4メートル程度の至近距離から舞台での彼女を見たのは初めてだったが、とにかく華がある。
1956年生まれの彼女は、今年54歳である。とても信じられないほどの若さを保ち続けている。 七瀬なつみ演ずるエルヴステード夫人との掛け合いの場面で見せる意地悪なヘッダの姿。
高飛車なその態度も、大地真央が演ずると、どことなくチャーミングで憎めないものになる。
夫テスマンとの新婚生活に退屈し切っている姿、テスマンの長年のライバルであるレーヴボルグの死を知った時の発言(自殺だと思い込み、自らの人生に自ら決着をつけたと肯定的に捉えた)、そしてラストで自らの命を絶ったこと、これらを良く理解するには、本作品が発表された当時の時代背景を知っておく必要があるだろう。

以下パンフレットからの抜粋だが: まず、1890年のノルウェーは女性解放運動が始まったころで、家庭や社会の男女平等に関するテーマで多くの論争があったということ。フロイトなどにより心理学が発達し、女性のヒステリアについて心理学的学説も出てきた。才能ある女性が、家で何もすることなく人生を送ることによってたまるフラストレーションなど、女性の心理に目が向けられるようになった。イプセンの時代、ノルウェーの首都オスロは、クリスチャニアと呼ばれ、クリスチャニア・ボエームと名乗る急進的な芸術家・知識人たちのグループがあった。彼らは、教会の教えに反発し、人類が成長するためには、キリスト教の教えをはじめとした因習を捨て、もっと欲望によって行動しなければならないと考えた。また、彼らには約束事があり、その一つは「自分の命は自分で決着をつける」ことだった。
如何に裕福な身分であったとしても、女性である限り自らの人生を主体的に生きることができなかった時代。 文化史の研究者であった夫のように、打ち込める仕事もなく、退屈のうちに過ぎ行く日々。 そこでヘッダが行ったことと言えば、身近な人間関係に影響を及ぼし、他者の人生を支配しようとする試みだった。 しかしながら、逆に、ヘッダは他者によって自らの人生を支配される結末を迎える。 レーヴボルグに自殺を唆したことを判事に見破られたことで、自己の人生に対するコントロールを失い、最後の拠り所となるべき夫からは必要とされなくなる。 そして、自らの人生に決着をつける。 命を絶つ寸前まで気丈に振舞うヘッダの姿は、痛々しく、同情を禁じ得ない。
by GF777 | 2010-09-20 00:06 | 過去投稿記事の移行


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