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東京乾電池 『長屋紳士録』 を観る

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夕方仕事を切り上げ、座・高円寺へ向かった。
東京乾電池の『長屋紳士録』を観た。
『長屋紳士録』は小津安二郎監督の戦後最初の映画作品。
今回の公演は、柄本明演出で本作品を舞台化したもので、初演時に大好評を博したものの再演とのフレコミだった。

『長屋紳士録』
原作・脚本: 小津安二郎、池田忠雄
演出: 柄本明
出演: 柄本明、ベンガル、織田俊樹、角替和枝、江口のりこ、作間ゆい、他劇団員多数

週初めの月曜の夜見るのにはとても良い作品だった。
さすがに週初めというのは、重い作品や激しい内容の作品を見るのは少々憚られる。
気分的に翌日からの仕事に差し支えてしまうことがあるからである。
想像していたとおり、ほっこりと心温まる芝居だった。
柄本の小津作品への愛着が感じられた。
大戦後のまだ日本が焼け野原から立ち直ろうとしてた大変な時期の話なのではあるが、のんびりとした長屋での日常生活、人間関係が描かれており、とてもほほえましく、且つ、穏やかな笑いを誘うシーンが散りばめられている。
何といっても素晴らしかったのは、柄本の妻であり女優の角替の演技。勝気で口は悪いが憎めない長屋のおばちゃんを見事に演じきっていたと思う。彼女、おばちゃん役をやらせたら、天下一品ではなかろうか。火鉢の前、煙管で煙草を吸うシーンなども様になっていた。(思わず、自分の父方の祖母を思い出した。明治生まれの女性には、大正ロマンのハイカラな時代に経てきたせいもあるのだろうか、粋な人が多いと思う。私も幼少の頃、火鉢を前に煙管で煙草をうまそうに吸っている祖母の姿を見ており、何とも言えぬ格好良さを感じたものだ。)

実はこの作品には『長屋紳士録』の他、いくつかの小津監督の映画作品のシーンが盛り込まれている。メインとなる長屋でのお話の合間合間に戦後間もない頃を思わせるようなシーンがコラージュ的に挿入されている。
私は、戦後の混乱期を体験したわけでは決してないのだが、なぜだかとても懐かしさを感じさせる大衆食堂と思われる食堂で客達がテレビについて語る(「一億総白痴化」という時代を感じさせる言葉が出たり)のシーンとか、ワケアリらしい若い夫婦が小さなちゃぶ台を真ん中に向かい合わせに正座して、漬物をおかずに茶漬けをかきこむシーンとか、諸々。

今回の公演では、気になった女優が二名。江口のりこと作間ゆい。江口は、ワケアリの若い夫婦の妻を演じていた。ゆったりとした物腰の中にもしっかりとした芯を感じさせる妻役だったが、その演技にはとても気になるものを感じた。ちょっと注目してもいい女優さんかも。作間は、角替演じたおばちゃんの女友達キク役で登場。彼女はとてもキレイだ。本作品における唯一のキレイどころの役。美しい着物姿で、キレイで気風の良い姉さん的な役柄だったが、角替とのやり取りの演技を見ても、ベテラン女優相手に堂々としたもので、登場場面は少なかったものの、十分な存在感を残していたと思う。

出演者全員が東京乾電池の役者さんだったが、それぞれとてもいい演技をしていた。
70分程度の上演時間も月曜の夜には程良く、とても満足した。
気分が良くなって、高円寺駅高架下の大衆居酒屋で一杯ひっかけてしまった。
面白かった芝居の後の一杯は、最高だ。
by gf777 | 2010-11-01 23:15 | 演劇


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