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鴻上尚史作・演出『エゴ・サーチ』を観る

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作・演出: 鴻上尚史
キャスト:  山崎雄介
        古河耕史
        小野川晶
        大久保綾乃
        渡辺芳博
        高橋奈津季
        小沢道成
        大杉さほり
        三上陽永
        杉浦一輝
        
9月10日(金曜)夕方、仕事を切り上げ、紀伊国屋ホールに向う。
鴻上作・演出の『エゴ・サーチ』の観た。公演初日。金曜の夜、期待に胸膨らませ、新宿に向った。
2007年に鴻上が、演劇観を共有する若い俳優と一緒に芝居を作りたいということで立ち上げた「虚構の劇団」の第五回公演だ。
出演者全員が、虚構の劇団所属の役者で、プロフィールを見ると全員が1980年代生まれの若者達。
座席は前から4列目。ステージに向って左側の端に近い席だったが、役者の表情をつぶさに確認できる距離で申し分ない。

本公演には当初から期待していたが(従ってチケット手配のタイミングも早かったのだが)、その期待を上回る公演だった。
この芝居は本当に面白かった。
8月半ばに見て感動した真心一座の「身も心も」に匹敵する感動を得たお芝居だった。

まず、出演者全員が舞台袖四方八方から登場し、ミュージカル風のダンス&合唱が始まる。
その後、芝居が始まる。
とにかく、テンポが良い。小気味良いリズム・テンポで場面転換が図られていて、台詞のテンポも滞りのないキャッチボールを見せられているようで、
心地よいリズムによって、見えている側も次へ次へとうまいこと引っ張られていってしまう。
女優陣も滑舌良さを要求される台詞回しをポンポンポンポンうまいことこなしていく。
また、役者陣の演技もなかなかなものだった。ダンスも歌も上手い。
特に良かったのは、主人公の一人、美保役を演じた小野川と、主人公ではないものの物語の中で提示された謎を解く役割を果たすネットサービス会社社長を演じた渡辺。
本作品で扱われている内容(主人公たちが抱える葛藤、その他の登場人物たちが密かに抱える問題)は重いものであるが、沖縄の精霊ギムジナーやノー天気な男性二人組のミュージシャンの登場、事故死して幽霊となって現れた美保のコミカルな演技などによって、明るく前向きな作品に仕上げられている。
また主人公の三人の男女の間に生まれた三角関係も、後半部分でのフラッシュバックの場面によって、誰もが容易に想像するような単なる三角関係(一人の女に思いを寄せる二人の男)ではないことが判明し、見る側を驚かせ、結果観客はますます芝居に引き込まれていく。
フックの掛け方が非常に上手い。実は、その三角関係は、一人の男を巡るものだったことが判明する。
健治(主人公の一人)に思いを寄せていたのは恋人の美保だけではなかった。仲のいい友人であり会社の同僚だったタカも実は、人知れず、健治に恋愛感情を抱いていた。
この三角関係に加え、クライマックスでは、その他の謎も一挙に解き明かされる。
健治が、自身の居眠り運転が原因で引き起こされた交通事故で恋人の美保を死なせてしまったこと。その罪悪感から飛び降り自殺未遂を起こしたこと。その後、過去の記憶を失っていたこと。
美保も、事故直前に、居眠りしてしまったこと。(ほぼ徹夜の状態で車を運転することになった健治のことを気遣い、自分も起きていようとしたにも関わらず)
仮病を使い仕事を休むことで、健治をほぼ徹夜状態で車の運転をせざるを得なくした原因を作ったのは、タカだったこと。

ラストは、恋人を事故で失った事実から健治が立ち直っていく姿が描かれつつ、幕が下りることになる。
タカが健治に思いを寄せていたこと、事故直前美保も居眠りしていたことは、結局健治には知られないままに。

ヘビーな葛藤を扱いながらも、コメディの要素がふんだんに取り入れられており、小気味良いテンポの心地よさの中で見る側の笑いを誘う。
しかしながら、笑いに流されることはなく、後半部分の謎解きの過程では観客の上手いこと引き込んでいく。
クライマックスのドタバタの後のラストシーン。幽霊の美保が、健治に別れを告げる。最後に観客の涙を誘う。

非常によく練れられた構成の作品で、私はこの芝居にはぐいぐい引き込まれていった。
釣り名人にうまいこと釣りあげられてしまった魚のような気持ちだ。
by GF777 | 2010-09-11 00:00 | 過去投稿記事の移行


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