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井上ひさし追悼こまつ座公演『水の手紙』『少年口伝隊一九四五』を観る

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紀伊国屋サザンシアターにて、井上ひさし追悼 こまつ座第九十一回公演『水の手紙』『少年口伝隊一九四五』を観た。
カンフェフィ席の格安チケットだったため、座席はかなり後ろの方、最後尾から二列目で少々がっかりした。サザンシアターは奥行があるので、後方の列だとかなり舞台から遠ざかってしまう。
但し、今回は特にお目当ての役者がいた訳でもなく、朗読劇という表現形式は一体如何なるものか見てみたいという好奇心からの観劇だったため、まあ良しとしよう。ちなみに出演者は全てこまつ座の劇団員(ほとんどが若手)だった。

舞台では『水の手紙』と『少年口伝隊一九四五』という二つの朗読劇が演ぜられた。
作品紹介文(こまつ座ウェブサイトより抜粋)を書き残しておく。

『水の手紙』
今、世界中からの水についてのニュースや報告が集まってきています。そのほとんどは、水の異常な現象についてです。これは世界の水は危機に瀕しているのではないか?その一方、ヒトの身体の六十%は水でできています。トマトはその九十%が、サカナは七十五%が水でできています。そして地球そのものが水惑星といわれています。だからこそ、水の問題は私たちだけの問題ではなく、地球そのものの問題なのです。「水とともに生きねばならない」と井上ひさしは訴えます。水と人間の共生を謳った作品です。

『少年口伝隊一九四五』
昭和二十年八月六日、原子爆弾が広島の上空で炸裂した。一瞬にして広島は壊滅、かろうじて生き延びた英彦・正夫・勝利の三人の少年は、やはり運よく生き延びた花江の口利きで中国新聞社に口伝隊として雇われる。三人の少年は、人々に新聞を口伝しながら、大人たちの身勝手な論理とこの世界の矛盾に気がついていく。やがて敗戦。連合軍が広島に進駐し、戦後が始まろうとした。しかし正夫が原爆症を発症、ひょんなことから手榴弾を手にした勝利はある決意をする。そこへ戦後最大級の台風が広島を襲うことになる。

朗読劇というものの、『水の手紙』の方は、あらかじめ抱いていた静的なイメージとは全く違った動的なものだった。台本を手に持ち、台詞を読み上げていくという形式とはまるで違ったものだった。舞台中央の天井から吊り下げされた青い地球。宙に浮く地球の下で若手の劇団員20名近くがぐるぐると歩き回り、走り回り、または地球の真下、舞台上を放射線状に寝ころびながらキーワードめいた言葉を脈絡なく発していく。問題提起そのもののには、共感せざるを得ないものの、「青年の主張」を集団で動きのある形式で行っているような感じで、感想としてはまずまずといったところ。

『少年口伝隊一九四五』の方は、「朗読劇」という言葉からイメージしていた表現形式そのもの。舞台上に横一列に並べられた椅子に役15~6名の学生服姿の役者が座り、全員が台本に手にとり、台詞を読み上げていく。いくつかの場面では役者が椅子から立ち上がり演技を交えながら台詞を読み上げることも。面白い表現形式だとは思うものの、中途半端さを感じざるを得なかった。いっそのこと、演劇として演じてもらった方が、という感想を持った。ストーリーも面白いし。
しかし、原爆投下から一か月足らずの広島を戦後最大級の台風が襲い、とても大きな被害をもたらしたという事実は、この作品がきっかけて初めて知った。
1945年9月17日に広島を襲った台風は、枕崎台風と呼ばれ、昭和の最大台風の一つに数えられるとのこと。日本を縦断したこの台風は各地で大きな被害をもたらし、特に広島では死者・行方不明合わせて2000名を超えるもので、原爆の惨禍に正に追い討ちをかけた。
本作品中、メインキャラクターの少年が、何でこんなひどい目に遭うのかと慟哭する場面があるのだが、原爆後の広島を命辛々生きのびた人々が、さらに戦後最大級の台風に打ちのめされたということを考えると、たまらない気持ちになる。
問答無用の不条理に翻弄されるがままの哀れな人間の姿。「不運」の一言ではとてもじゃないが納得し切れない。
原爆・台風の二つの大惨禍を経て生き延びてきた人たちに静かに敬意を表したい。そして亡くなった方々には冥福を祈りたい。

今回の公演は、井上ひさしの追悼公演だったこともあり、井上ひさしと過去親交のあった俳優が一公演に一人、ゲストトークを行う。私の行った11月17日の夜の公演では、東京ヴォードヴィルショーの佐藤B作がゲストとして登場し、追悼文を読み上げた。
by gf777 | 2010-11-17 23:00 | 演劇


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